ITバブルを超えた?指数平滑移動平均で見る現在の過熱感 ― 日経平均株価の“乖離率”から見る異常値
株価が上がると「今回は(バブルとは)違う」と言いたくなるものです。
しかし、データは正直です。
2000年の通称ITバブルと呼ばれる株価上昇期と
2025年の現在を、同じ「指数平滑移動平均(EMA)」で比較してみると、
実は今の相場の方が明らかに乖離が大きいという結果が出ました。
指数平滑移動平均(EMA)とは何か?
まず、EMAとは “Exponential Moving Average(指数平滑移動平均)” の略です。
直訳すると「指数的に重みづけされた移動平均」であり、
直近のデータをより重視することが最大の特徴です。
通常の移動平均(SMA:Simple Moving Average)は、
指定期間の終値を均等に平均します。
たとえば25日SMAなら、25日前の終値も昨日の終値も同じ重みです。
一方でEMAは、過去よりも“直近の変化”をより重視して平均を算出します。
その結果、価格の変化により素早く反応し、トレンドをより正確に捉えることができます。
テクニカル分析の世界では、一般的に以下の判断材料として用いられます。
- トレンドの方向:価格がEMAより上にあるか下にあるか
- 相場の温度感:価格とEMAの乖離率
短期・中期・長期のEMAをそれぞれ見比べることで、
相場の“過熱”と“冷却”のバランスを定量的に捉えることができます。
ITバブル期と現在の乖離率比較表
| 時期 | 終値 | 9EMA | 24EMA | 9EMA乖離率 | 24EMA乖離率 |
| 2000/3 | 20,337.32円 | 18,778.31円 | 17,671.64円 | +8.3% | +15.1% |
| 2025/10/9 | 48580.44円 | 42,201.37円 | 38,742.46円 | +15.1% | +25.4% |
- 現在の9EMA・24EMAいずれも、ITバブル期を明確に上回る乖離。
- 特に24EMAで+25%超というのは、通常の強気局面を超えた「加熱圏」。
- テクニカル的には2000年3月を超える過熱水準に見える。


日経平均株価(月足) 出所:楽天証券(iSPEED)
乖離率の一般的な目安
乖離率は、価格が移動平均線からどれだけ離れているかを示す指標で、
その“離れ具合”によって相場の過熱・冷却の度合いを判断します。
一般的な24EMA(もしくは25SMA前後の中期トレンド)を
前提とした目安は以下のとおりです。
※EMAは直近データへの感度が高いため、同じ乖離率でもSMAより実質的に過熱度が強いと解釈できます。
| 乖離率 | 過熱感 | 解釈 |
| 0%前後 | 中立 | 方向感に欠ける。 |
| ±3% | 通常の変動範囲 | 健全なトレンド。 |
| ±5〜8% | やや過熱/やや売られすぎ | 短期的な反発・反落に注意。 |
| ±10〜15% | 強い過熱/強い売られすぎ | トレンド転換の前兆となり得る。 |
| ±20%以上 | バブル/パニック領域 | 持続不可能な極端なトレンド。 |
2025年10月9日の日足データで見る過熱感
- 日経平均終値:48,580.44円(+848.45円/+1.77%)
- 10月1日安値:44,357.65円 → わずか7営業日で約4,200円(+9.5%)上昇
| 指標 | 値(円) | 乖離率 |
| 5EMA | 47,573.66 | +2.12% |
| 25EMA | 45,370.88 | +7.07% |
| 75EMA | 42,816.00 | +13.46% |
- 短期(5EMA +2.1%):強いが過熱感は薄い
- 中期(25EMA +7.1%):強い上昇トレンド
- 長期(75EMA +13.5%):高所恐怖ゾーン
短期的にはそれほど加熱していないように見えるが、
中長期的には明らかに加熱感が出ている。

「今回は違う」は本当か?
確かに、2000年当時と今とでは以下のように構造的に異なる部分もあります。
- AI革命による社会構造の変化の真っ只中
- 企業収益は史上最高水準
- 円安による輸出企業の更なる利益押し上げ効果
しかし、「構造が違う=バブルではない」とは限りません。
当時も“IT革命で経済構造が変わる”という物語が過熱を支えました。
今も“AI・半導体・ロボット”が同じ役割を果たしています。
株価は最終的には需給によって形成されます。
ファンダメンタルズや上記のような材料は
株価が形成される理由の後付けに過ぎないと思ってます。
正常とは何かを思い出し、熱狂に惑わされない
- 9EMAで+10%、24EMAで+20%を超えると明確な過熱領域。
- 現在はITバブルを上回る乖離水準。
- 「構造的に違う」ではなく、「価格形成の速度と上昇率が似ている(超えている)」点にこそ注意。
7営業日で+4,000円を超える上昇。
短期的な下落は必然に近いように見える。
それが時間調整か、価格調整かを見極めることが重要な時期に入っている。
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